Entries from 2021-06-01 to 1 month

『おかえりなさいませ』

『おかえりなさいませ』 襖を開けると、温かい部屋で、詩が畳に手をついて頭を下げている。 「ああ、ただいま、桜」 パッと上がった幼さの残る詩の顔は笑顔で、信継を見上げ、嬉しそうに微笑んでいる。 ーーかっ…かわっ…!! 思わず鼻血でも出てないかと、信…

「始めは『三鷹の侍女』だと思っていたのです

「始めは『三鷹の侍女』だと思っていたのです。 父上にも、すぐに願って許可も貰っていたのです。 ただ、運命のいたずらかーーあの日、牙蔵と仁丸が桜に先に関わり… いまだに」 そこまで言うと、信継は黙り込んだ。 「…っ」 詩がチラっと見上げると、信継の…